抜歯後に見える“血の塊”って何?

「抜歯後に穴の中に赤黒い塊ができている」「ゼリーみたいなものがあるけど取ってもいいの?」
そう感じて「抜歯後 血の塊」で検索されたあなたへ。
それ、取ってしまうと激痛につながる危険な落とし穴になるかもしれません。
この記事では、歯科医が実際の臨床現場で大切にしている「血餅(けっぺい)」の知識を、専門的かつ分かりやすく解説します。
血の塊(血餅)とは?
血餅とは、抜歯後に傷口から出た血液が固まってできる「自然のかさぶた」です。医学的には“フィブリン血餅”と呼ばれ、傷の保護と治癒に欠かせない役割を担います。
血餅の主な3つの役割
止血
出血を抑え、出血部位に“フタ”をする
保護
骨や神経を細菌・食べかす・唾液から守る
再生の足場
骨や歯ぐきの細胞が修復・再生するための“足場”になる
血餅が剥がれるとどうなる?

万が一、血餅が取れてしまった場合、非常に強い痛みをともなう「ドライソケット」という状態になることがあります。これは、血餅が存在しないために、骨がむき出しになり、外気や唾液、食べかすなどの刺激が直接神経に届いてしまうことで発症します。
ドライソケットの主な症状は以下の通りです。
- 抜歯後2〜4日目あたりに、急にズキズキと鋭く強い痛みが出てくる
- 傷口の穴の中が白っぽく見える(骨が露出している)
- 食事や飲み物に反応するほどの痛みがある
- 口臭が強くなり、膿のようなニオイがする
血餅を守るために「やってはいけないこと」

抜歯後の数日は血餅がまだ不安定な状態です。以下のような行動は血餅を失うリスクを高めます。
強いうがい
水うがいをする際に「くちゅくちゅ」と勢いよく口を動かすと、血餅が剥がれ落ちてしまいます。軽く口をゆすぐ程度にしましょう。
飲み物をストローで飲む
吸う力(陰圧)によって、血餅が吸い取られてしまうことがあります。水分はコップからそのまま飲んでください。
舌や指で触れる・歯ブラシが当たる
気になっても、絶対にいじらないようにしましょう。
熱い飲食物・飲酒・激しい運動
血流が過度に増え、出血や血餅の脱落につながるおそれがあります。
血餅の見た目は?いつまである?
血餅の見た目は日ごとに変化します。これを知っておくと、不安にならずに済みます。
抜歯当日~1日目
赤〜赤黒い、ややゼリー状の見た目。出血が固まり始めた状態です。
2〜3日目
表面がやや黒ずみ、乾いた感じになります。内部で治癒が進行中です。
4日目以降
白っぽい薄膜(フィブリン)が表面に現れます。これは感染ではなく、正常な治癒反応です。
よくある疑問と回答

Q.血の塊が大きすぎる気がする…
A.問題ありません。血液が多く出た場合、血餅が大きくなることはよくあります。数日で自然に小さくなります。
Q.食事中に一部が取れてしまったかも…
A.痛みがなければ様子を見て大丈夫です。強い痛みや白く見える状態になってきたら、歯医者へご連絡ください。
Q.白っぽくなっていて心配…
A.白い膜は「フィブリン」という治癒成分で、正常な変化です。ただし、ズキズキとした痛みやにおいを伴う場合は要注意です。
ご心配な方は、お気軽にご相談を

血餅は、傷を守り、組織を再生させる「天然の治療装置」とも言える存在です。その見た目に驚いたり、不安になったりする方も多いかもしれませんが、むしろ血餅がしっかり存在していることは“順調な証拠”です。抜歯後に何か異変を感じたときは、自己判断せず、すぐにかかりつけの歯医者へご相談ください。
当院では抜歯後の経過観察や、ドライソケットの予防・処置にも丁寧に対応しております。「大丈夫かな?」と思ったら、遠慮なくご連絡ください。

加藤歯科クリニック
について

加藤歯科クリニックは中村橋の一般歯科・小児歯科です。お口まわりのどんな症状・悩みも診療します。「急な痛み」や「被せ物の脱離」など、今すぐ処置が必要な患者様を予約なしで受け入れています。お困りの方はお電話ください。